第1章 始まりは最悪な形で
『ところでさ、お腹空いてない?美味しい店見つけたんだ!奢ってあげるから食いに行かない?』
「え!いいの!?」
『うん!どうせここ最近コンビニ弁当とか味気ないものばっかり食ってたんだろ?』
「ゔ....それは....」
『ちょっと遠いけどいい?』
「それは全然大丈夫!むしろいいの?奢ってもらっちゃって。」
『高学歴の高給取り舐めんな〜。』
「うわ....なんか嫌味言われた気がする。」
丁度最寄りだった新宿駅へとはいると、2人は切符を買って駅のホームへと向かう。
『にしてもタケミチも大変だよね。あの店長さんめっちゃ怖くない?』
「怖くはないけど....毎日毎日年下の店長からは馬鹿扱い。ガキにも舐められて、極めつけには未だに童貞だぜ?」
『え!?もしかして、ヒナとしか付き合ったことないとか言わないよね?』
「.....橘以外と付き合った事ない.....」
『なんかドンマイ。』
「ドンマイってなんだよ!リッちゃんはいいよなぁ〜。」
『何で?』
「だってそれ、ペアリングだろ?」
タケミチはリツカの胸元に指を指す。
そこには、ネックレスに付けられたシルバーの指輪が光っていた。
ペアリングなのは確かだがこれはけして彼氏に貰ったものでは無い。
どうやらタケミチはこれを婚約指輪か何かだと勘違いしているようだった。
『あ〜違う違う。ペアリングなのは確かだけど、これは彼氏とかそういうのじゃないよ。昔大切な人に貰ったやつ。』
「大切な人?」
『うん。まぁちょっとやんちゃやってる頃にな。もう12年も前のことだけど。』
リツカは首からネックレスを外すとタケミチの手に指輪を置く。
それを受け取ったタケミチはへぇ〜と言いながら指輪をまじまじと見つめた。
「これって何の花なの?」
タケミチはそう言うと指輪の装飾の花に視線を向ける。
『これ?えっとカランコエだったはず.....』
「カランコエ?聞きなれない花だね。」
『うん。花言葉がどうとか言ってたけど.....結局教えてくれなかったんだよ....』
「へ、へぇ。あ、内側に文字が書いてある。えぇっと?To...m...z...i.....?」
文字がかすれているのか、タケミチは目をグッと目を細め指輪を見つめる。