第6章 集会と謎
咄嗟に左耳の耳元に手を当てるが、それはするりと手のひらからこぼれ落ちるとキンッ!と音を立てて床に転がった。
『あ〜....留め具が壊れちゃったのか。』
12年も経てばそりゃ壊れるよね。と言いながら床に無造作に転がったピアスを拾い上げる。
このピアスはドラケンから託されたものだ。
内部抗争でドラケンが死ぬ少し前に彼とお互いに生きて帰ると誓いを立てて交換したピアス。
しかし、それはもう古いせいか留め具が壊れてしまっていた。
『そういえばもう少ししたら命日か......』
カレンダーを一瞥してリツカはそう言うと纏めた荷物を片手に使い慣れた車に乗ってドラケンの墓へと向かった。
『久しぶり。ドラケン。今回は早かったな....なんて君は言うのかな?』
「......」
『あはは。本当に無口だよね.....まぁそりゃそうか。墓石が喋ったら怖いよね。』
片手に彼が昔食べていたカルビ丼を持って、リツカはドラケンの墓の前に座る。
『早いもんだよね。もう君が死んで12年。良くも悪くも色んなことが変わっちゃった。なのに君は変わらないよねずっとあの頃のまま。』
リツカはまるであの日を思い出すように目を伏せると冷たい墓標を指先で撫ぜる。
『12年ずっと後悔してた.....なんであの時ドラケンとマイキーを止められなかったのかなって......後悔して、過去ばっかり見続けて、前に進もうとしなかった。でもそれも今日で辞めることにしたんだ。』
「.......」
『私に出来るのことをやってみようそう思ったんだ。』
リツカは決心したような表情を浮かべると、墓前にカルビ丼と壊れてしまっていたピアスを添えると、立ち上がる。
『"また来るよ。"なんて言わない。今度こそ杏花もドラケンも皆も救って見せる。もう誰も死なせない。
それが今の....東京卍會 元特攻隊 隊長 蒼葉六花にできる唯一の事だと信じてる。
だから見守っててよ。昔みたいにさ。』
後ろに手を組み、墓前に深々とお辞儀をした。
すると、どこからともなく吹いた風がリツカの頭を撫でる。
リツカは一瞬目を見開くと、フッと笑った。
『次会う時はお互いに歳をとって、あの時あんな事があったねって笑い合えるといいね。』
今にも泣きそうな声でリツカはそう呟くと、また車に乗って渋谷のマンションへと向かうのだった。