第5章 ただいま現代
【みんなバラバラになって、大人になってまた会ったらどんな話をするのかなって.....】
「ああ、覚えてるよ!」
タケミチは懐かしそうに笑顔で答える。
「こんな話はどうかな?
お前を線路に突き落としたのは俺だ。」
そう言って振り返ったアッ君の瞳はさっきとは違い酷く濁っており、暗い色を浮かべていた。
『!!』
「え?」
「確実に殺したはずだった。でも助けた奴がいた。隣に居た女じゃない.....橘直人だ!
あの時アイツはお前と女が線路に落ちることを知っているように見えた。変なこと言うようだけどさぁ.....」
────「お前過去に戻れるんじゃないのか?」
アッ君は期待するように、そして縋るように猟奇的な笑みを浮かべる。
「!」
「過去の橘直人に助けを求めたんじゃないのか!?」
「そうじゃないとおかしいだろ!?確実に助けられる状況じゃなかった!おかしいだろ?なぁ!?」
『やめなよ!!アッ君!!』
呆然とするタケミチに、アッ君は掴みかかる。
しかし、それをリツカが突き飛ばしタケミチからアッ君を遠ざけた。
「おかしいのはどっちだよ!アッ君!!アッ君はそんなんじゃない!アッ君はいつも冷静で....仲間思いで、優しくて、頼りになって.....だからアッ君が俺を殺すわけない!アッ君は俺たちの友達だ!」
『アッ君!何かの間違いだよね?嘘なんだよね!?タケミチを殺そうとするわけ.....ないよね?なんであんな事したんだよ!1番仲間思いだったじゃん!』
「!お前.....あの時タケミチの隣にいた女なのか?」
『〜っ!!.....そうだよ!なんでなんでなの!アッ君!』
「......」
泣き出す2人にアッ君は黙って背をつけると数歩2人から離れ、真っ暗な空を見上げた。
「タケミチ.....アオバ....」
2人の名を呼ぶ声は酷く震えており、名前を呼ばれた2人はアッ君に視線を向ける。