第5章 ただいま現代
屋上へと着くと外の生ぬるい風が頬を撫でる。
「元気してたか!タケミチ!アオバ!」
アッ君は12年前と変わらぬ笑顔を2人に向けると2人の首に腕を回して歩き始めた。
「イタタタタッ!痛いよ!アッ君!」
『首ぃ!首もげる!!』
「あはは!久しぶりに会えて嬉しいよ!あれから結構経つもんな!」
嬉しそうにするアッ君は見た目は変われど12年前のアッ君で3人は思い出話に花を咲かせる。
「大事なところで山岸が─────」
「屁ぇこいて台無しにしたやつ!」
「そう!せっかく俺キメたのによォ!」
『あの時の空気マジでヤバかった!』
「ダサかったよなぁ!」
あはは!と似つかわしくない3重の笑い声が混沌とした夜に響き渡る。
「中学以来か。」
「うん。アッ君からしてみれば10年ぶりとかかな?」
『(そっか.....私たちからしたらついさっき別れた様なものだけど.....今のアッ君からしてみれば10年ぶりなんだ。)』
「あ〜しかしすげぇな。アッ君はこんなでっけぇキャバのオーナーで東卍の幹部だって?」
「まぁ.....」
さっきとは打って代わり、暗い表情をしたアッ君は2人から視線を背ける。
「いい車乗って、いい服着て、いい女抱いてさ。俺とは別世界なんだろうなぁ!」
『うわぁタケミチ。その発言デリカシーない。』
「うっせぇ!」
「.....金で手に入るモンなんてしれてるさ。」
「くー、言ってみてぇよ!そのセリフ!」
暗い声で答えたアッ君に対し、タケミチはからかうように笑った。
「一緒に居たやつ警察だろ?そしてお前も....アオバ。」
『「え!えーと.....」』
「いいよ。バレバレ。橘日向の弟だろ?弟が居たなんて知らなかったなー」
「なんで、そんなこと知ってるの?」
『ア.....アッ君?』
景色を眺めていたアッ君はゆっくりとこちらに振り返る。
「東京卍會ってのはそういう組織だ。潜入捜査....してたお前なら知ってただろ?」
『.....』
気まずそうにリツカはコクと頷くと、アッ君は真剣な声で語り始めた。
「なぁ、覚えてるか?お前らがキヨマサ君に逆らった日。皆が帰った後タケミチ、お前が俺にこう言ったんだ。」