第5章 ただいま現代
卍 卍 卍
翌日
『ここがアッ君のお店?』
「義姉さん。遅いですよ。」
『ごめん。久しぶりの男装だから手間取った。どうかな?』
2人の前に立ったリツカの姿は
メンズのTシャツに灰色のパーカー、胸まである髪を1本にまとめ上げ、クール系の美少年となっていた。
「似合っていますよ。髪が長い分女性っぽくは見えますが、大丈夫だと思います。」
『そっか。なら良かったよ。後は男口調に変えるだけだね。』
「しかし、本当にここに千堂がいるんですか?」
目の前のいかにも高そうなお店にリツカはヒクリと苦笑いを浮かべ、ナオトは訝しげに扉を見つめる。
「うん。今このキャバクラの経営任されてるんだって。」
「大丈夫ですか?コノコノ来て。今の千堂は東卍の幹部ですよ?」
『東卍の幹部でもアッ君はアッ君だよ。仲間思いで優しい、アッ君だよ....』
「うん。リッちゃんの言う通りだよ。そりゃ電話の声は昔と比べて大人びてたけど昔と変わらなかった。」
タケミチもリツカもあの頃を思い出すように真っ暗な空を見上げる。
「マイキーに会いたいと正直に伝えてしまった事が気になります。」
「なんで?」
「あけすけ過ぎますよ。警察ですら、容易に近づける相手ではないんです。それに義姉さんは元東卍な上潜入捜査官....口封じされるかもしれない.....殺されに来たようなものです。」
「バカだなーナオトは!友情ってのはそう簡単に変わんねーんだよ!」
『.....』
いーから俺に着いて来い!心做しか足取りの軽いタケミチが笑顔で先陣を斬る。
しかし、その後ろでリツカは暗い表情を浮かべていた。
「いらっしゃいませ。ご指名は?」
店に入ると、白服の男とドレスアップした女性が3人を出迎える。
「え、あ、あのー」
「大丈夫ですか?」
『目がチカチカする....』
「せ、千堂さんと待ち合わせしてるんですが.....」
『めっちゃ緊張してるやん。』
緊張からか、声が上ずりモジモジとするタケミチが出迎えた男性にそういうと、男性は明らかにさっきまでの態度とは違い、雑な対応をする。
「は?君がうちの社長と?おーい、なんかみすぼらしいの来てってけど、社長とアポある?」
「プ!!!」
『みすぼらしい....だってー』
男はアポを確認するとすぐに戻ってきて、手のひら返しを始めた。