第19章 羽折れの天使
「空手」
『空手?なんだそんな難しい稽古じゃないじゃん。空手ぐらいどうってことないでしょ。終わってからでも遊べるじゃん。』
「私は!お兄ちゃんと違って空手とか柔道とか合気道は強くないし、痛いのは嫌なの.......」
『いやオレも痛いのは嫌だよ?』
「今日はお兄ちゃんと遊びに行きたいの。だからお願い。私もたまにはサボりたいの。」
急に何を言い出すかと思っていると、杏花の手が微かに震えていた。
そういえば、考えてみればたしかこの時期か。
空手の試合があるの。
おそらくだが、杏花は予選敗退したか何かしてあの人に怒られでもしたのだろう。
それがあの女に嫌味でも言われでもしたか?
いずれにせよだからこうしてサボりたいと豪語しているのだろう。
『.....はぁ。仕方ないな。他でもない杏花の頼みだもんね。』
「え?」
『おサボりするんでしょ?』
「本当にいいの!?」
『いいよ。昨日のパーティ頑張ったし。でもこれは杏花と私だけの秘密だからな。あの人たちには言っちゃダメだからね。』
「うん!」
『そしたら善は急げだ。休む連絡入れるよ。』
「ありがとう!お兄ちゃん!」
────Prrrrr。Prrrrr
《はいもしもし?》
『あ、もしもし。蒼葉です。杏花今日稽古をお休みます。はいはい。そうです。え、ダメ?いや。そこを何とか。 』
どうやらこうなることは見抜かれていたようで、先に根回しされていたか、なかなか休みが取れそうにない。
ちくしょう。めんどくさいな。
「とにかく今日は稽古に来てもらわないと────」
『あ、すみません。杏花は今日熱があるので無理そうなので。では!』
「え、ちょ!」
─────プツ。
『よし。』
「お兄ちゃん?どうだった?」
『まぁ、休むって言ってるし大丈夫でしょ。』
さてそしたらどこに行こうか。と考えているとガラケーの通知音が鳴る。
『こんな時間に誰─────』
パカと開きメールの中を確認すると、差出人は八戒の姉、柚葉からだった。
どれどれ?と本文に目を向けると、これから今八戒とボーリング場で遊んでいるから一緒に遊ばないかと言う誘いだった。