第19章 羽折れの天使
「柴大寿には黒い噂がある。何でも妹や弟に絆と称して暴力を振るってるらしい。アイツに関わるのなら気をつけてた方がいいぜ。((ボソッ…」
それだけ言うと"アガレス"はにっこりと笑い"グシオン"の後を追いかけるようにして帰って行った。
リツカはそんな2人を見つめるとにっこりと笑い、小さな声で『またね』と呟いた。
本当に私は仲間に恵まれているな。
あの子たちは家族とも呼べる。
2年前勝手にチームを解体した私を恨みもせずただ純粋な心で今でも着いてきてくれる。
本当にいい仲間だ。
2人の姿が見えなくなるとリツカは録音しておいたボイスレコーダーを切り、玉座から立ち上がると家路へと着いた。
「おかえりなさいませ。坊ちゃん」
『ただいま。東堂。』
「今日はこれからお出かけなさいますか?」
『いや。多分出かけない。とりあえず、お茶入れてきて。出来ればリラックス出来るやつ。』
「かしこまりました。」
スリッパを履いて長い廊下を考え事をしながらゆっくり歩いていく。
黒龍と東卍の決戦。
その火種はなんだ?
やっぱり柴八戒が大寿を殺したからなのか?
じゃあ稀咲はどう関わっているのだろう。
そもそも稀咲は関わっているのか?
いや、いずれにせよ稀咲とその手先である半間は絶対悪。倒さなければいけない存在だ。
これ以上好きなようにはさせない。
千冬と圭介が死ぬ未来を変えなければ行けないんだ。
そんなことを考えながら、自室の扉を開こうとした瞬間だった。
バンッ!!と勢いよく部屋の扉が開かれたのだった。
あれ?ここ私の部屋だよな?
「お兄ちゃん!お願い!!」
『え、杏花?何の話.....?』
「お兄ちゃん!お願いがあるの!!」
『うん。それはわかったからどうしたの?』
「今日どうしても習い事行きたくないの。おサボりして遊びに行きたいの!だからお兄ちゃん協力して!」
『珍しいね、杏花が習い事サボりたいなんて。なんでサボりたいの?』
「だって.....今日のお稽古楽しくないもん。」
『今日のお稽古って何だったけ?確かピアノとかヴァイオリンじゃないよね。』
杏花は黙り込むと、俯いてスカートを握りしめ、重々しく口を開いた。