第19章 羽折れの天使
『ッ!』
「お、お兄ちゃん?」
『ごめん。杏花、オレちょっと抜ける!後のことは東堂にお願いして!』
「あ、ねぇ!ちょっと!」
走り去っていくリツカを見た杏花は一瞬困惑した表情を浮かべたが、すぐににっこりと笑みを深めて「行ってらっしゃい。」と呟いた。
『マイキー!何でここに』
「話は後。ほら行くゾ!」
ヘルメットを投げて寄こしたマイキーはリツカを乗せて街で1番眺めのいい場所へとバイクを走らせる。
「着いた。ここ穴場なんだよな。誰もいない。」
『ホントだ。ねぇ何で私があそこにいるって知ってたの?』
「東堂くんから連絡貰ったんだ。オマエが元気ないからどうにかしてやってくれってな。自分や妹じゃ励ましても聞かないだろうからって。」
『そうなんだ.....』
「アイツらの言う通りだったな。どうした?そんな暗い顔して。」
『.....』
真実を言っていいのだろうか。
私はいつもそうだ。
中途半端で不甲斐ない。
今目の前で心配してくれるマイキーの胸を本気で借りることが出来ない。
『大丈夫.....なんともないよ。"オレ"の問題だから.....』
「リア」
マイキーは震えるリツカの身体を優しく抱きとめると、ポンポンと背中を叩いた。
それはまるで子供をあやしているようで、リツカは安心感から涙を流し始めた。
「大丈夫なんて顔してねぇよ。助けてって顔してる。どうせ親父絡みだろ?俺と別れろとでも言われた?」
『!』
「オマエはいつもそうだ。抱え込んで壊れそうになって自分じゃどうしようもなくなってから周りに打ち明ける。助けてって素直に言ってくんねぇ。言ってくれたら俺らはオマエをいつだって助けるのに.....みんなオマエを心配してんだ。だから話してくれるか?」
『マイキー.....〜〜〜っ!』
リツカは大きく目を見開くとその瞳に涙をためて、少し迷った後に口を開いた。