第19章 羽折れの天使
『ッッ!』
「何が彼女だ。何が女なれただ!何が付き合っただ!貴様は立場をしっかりと理解しろ!!オマエは女にはなれない!ましてや下賎な者と交際など以ての外だ!オマエは女では無い男だ!」
違う......
「オマエは蒼葉家の人間で蒼葉家の御曹司だ!」
違う......
「オマエは私や母の言うことだけ聞いておけばいい!無駄なことを考えるな!オマエは私たちの道具なんだ!道具は道具らしく地を這いつくばり、私たちの言うことだけ聞いていればいい!」
違う......
違う違う違う違う違う違う違う─────
──────違う!
『違う.....私はっ.....((ボソッ…』
私は貴方のモノでも、駒でもない。
私の人生は私のものだ!私は自分で望んでマイキーのモノになった。
それが本来の私で、本当に望んだ私。
例えこの世界で女になれずとも、私はマイキーの、東卍のみんなの前では本当の私でありたい!!
ありのままの私でいたい。
それを声を大にして言えたらどれだけいいことだろう....
でも私はこの人には逆らえない。
私はこの人にずっと囚われている。
恐怖し、逃げて向き合おうとしなかった。
向き合えないとわかっていたから.....
私とこの人は違うんだ。
根本的なところが全く違う。
「次はない。今すぐ佐野万次郎とも別れろ!!」
『.....』
「聞いているのか!?もうすぐオマエにも許嫁を取ろうと思っている。ソイツはオマエが女だと知っている者だ。しかし、オマエが女だと知るのはソイツだけだ。他の者には絶対にバラすことは許さん。」
『許嫁なんて要らない.....((ボソッ…』
「オマエにとってはただの日常でも、私たちからしたら大切な時期なんだ!それを自覚しろ!その時になって障害となる奴がいては話にならん。オマエとアイツらでは住む世界が違うのだ。」
『分かり.....ました.....』
「ふん。出発まで自室に居ろ。そこで思う存分反省するがいい。」
『はい.....』
ガッ!!と乱暴に髪の毛を離した父は舌打ちをしながら、ネクタイを整える。
痛む頭を抱えながら立ち上がったリツカは未だ苛立ちを抑えきれていない父を置き去りにして、部屋を出ると少しだけ暗い顔をした東堂が待っていた。