第19章 羽折れの天使
「坊っちゃん。準備の時間です。」
『そう。じゃあちゃっちゃと始めますか。』
「はい。」
東堂の返事と共に現れた侍女長達が部屋に入ってきては、リツカの胸に晒しを巻いていく。
『痛い痛い痛い!』
「我慢してください。ほらナベシャツも着てください。」
『はいはい。こんな厳重にする必要ある!?』
「もしものことがあった時蒼葉グループに泥を塗ることになります!なので厳重にするのは当たり前です。」
今日の夜にあるパーティは今年度開通される新事業の試写会らしく支援及び投資した企業を招いたパーティーが行われるそうだ。
その為、今日は侍女長は張り切って準備をしているのだ。
『東堂!そういえばなんだけど招待状を出したのは誰?』
「津田社の津田浩二(つだ こうじ)様で御座います。」
一応リツカが女な為、部屋の外に出ていた東堂が答える。
『つだこうじ.....津田浩二.....あぁこの前傷害事件起こした放とう息子がいる所か。』
「その覚え方はどうかと思います。それに傷害事件と言ったらおぼっちゃまは人のこと言えません!どっちも変わりませんよ!」
『(おー怖。相当おかんむりってわけね。)』
呆れたように侍女長はそう言うとリツカを叱りつける。
まぁ慣れていることだが。
侍女長は紳士の流儀というものを私に、そして淑女の流儀を杏花に教え込むために雇われている。
彼女の立場からしたら怒るのは当然のことだろう。
何時代だよ.....
中世ヨーロッパの貴族じゃあるまいし。
『変わるよ。アイツが殴ったのは一般人のか弱い女子。オレが喧嘩してんのは同じ不良。不良が喧嘩できないんじゃ不良なんてやってられないよ。それにまずは1発殴られてから反撃してるから実質正当防衛。警察にもお世話になってないし。アイツとは別個でしょ。』
「おぼっちゃま!仮にも津田社の御子息をアイツや放とう息子などと!それにまた言い訳をして!」
『あーはいはい。ごめんなさい!』
「またそのように適当になさって!これではいつまで経っても奥様は安心なされませんよ!」
そう言われても別にどうでもいいんだけどなぁと思いながら聞き流す。