第19章 羽折れの天使
『あーはいはい。そうね。一応気をつけとくよ。東堂。着替え終えた。入ってきていいよ。』
「失礼します。」
「はぁ。まったく.....東堂。ではアタクシは杏花様の準備に向かいます。あとは頼みましたよ。」
「はい。」
バタン。と閉ざされた扉を2人で見つめるとリツカはあはは!と笑いだした。
『めっちゃキレてた!相変わらず短気だなぁ。』
「お嬢様!いつもいつも侍女長を怒らせるような事して!いつかきっと旦那様に報告されますよ!」
『されても問題ないよ。あの人"私"には興味無いから。興味があるのは私の肩書き。"蒼葉グループの跡取り息子"だけだし。ほっときなさい。』
「......」
『うーん』
中々結べないネクタイにリツカが苦戦していると、東堂がすかさずネクタイを手に取り閉めてあげる。
『!ありがとう。東堂!』
「いえ。こう言ってはなんですが.....とてもお似合いですよ。」
『ありがとう。さすが東堂が選んだだけあるわ。』
「よく気づかれましたね。さすが坊ちゃんです。お褒めに預かり光栄です。それでは旦那様がお呼びです。旦那様の元に────」
すると、中からバンッ!!と音を立てて杏花が現れた。
「お兄ちゃん!」
『ん?杏花?どうしたの?』
「助けて!侍女長が! 」
「杏花様!」
ほぼ下着姿で飛び込んできた杏花にリツカはあまりの驚きに頭の中に?を浮べる。
『杏花。どうした?』
「パーティかなんか知らないけどドレス無理やり着せてくるの!」
『(あ〜そっか。杏花、ドレスは動きにくいから好きじゃなかっけ。気持ちはわからんでもないけど。)』
最も私の場合
女でありながら男物の服を着なければならないという矛盾をどうしても受け入れられず、パーティに行けば自分と同じくらいの子達が可愛いドレスや服を身に纏っている姿を見るのが嫌で正装嫌いな時期があったが。
杏花のそれとは似て非なるものなのだろう。