第19章 羽折れの天使
【12月〇日】
今日は全国模試の結果が返された。案の定また数学だけは全国2位だった。
この答案を見せればおそらくあの女は怒り狂うだろう。あの人ならこんな無様は晒さなかったとか何とか言って。
それにパーティも重なってる。あの人の神経を逆撫でする行為は辞めておいた方がいい。
未来の私。ここだけの話、高校進学が留学だっていう話しが出ている。
既に海外の名門校やエスカレーター式の大学まで話が来ている。そのせいかあの女は舞い上がっている。奇行が激しくて東堂や侍女長でも抑えきれていない。
しかし、留学してしまえば杏花は?マイキーはどうなる。おそらく杏花はこの家であの女に嫌がらせをされ、マイキーはとち狂うに違いない。
そのためにも留学の話は避けなければいけない。
私は約束したんでしょ?
マイキーたちだけのためにみんなが欲しがる力を使うって。なら、みんなを守るためにもどうかあの女を止めて。お願い。助けて未来の私。
『ふむ。"助けて"か。』
どうやら私が12年前東卍を抜けた理由はおそらくだが留学が原因で間違いないだろう。
あの時のあの言葉......
「【テメェが悪いんだろうが!オマエが最初に俺を捨てようとした!だから俺もオマエを捨てるしかなかった。オマエを思って逃がしてやったんだろうが!】」
そして杏花のあの言葉
「【ねぇ。お姉ちゃん。なんで私を突き放したの?分かんないよっ.....教えてよ。】」
点と点が繋がったな。
12年前の私.....つまり今の私はマイキーと東卍、そして杏花を捨てた。
そしてその理由は留学のことだと思う。
留学がまぬがれなかったのか?
それとも留学せざる負えない事情があったのか....
いずれにしろ私が東卍を離れたことが巨悪した原因。
『早いうちに手を打った方がいいな。』
「何をですか?」
『!』ビクッ!!
大量の参考書と辞書を持ってきた東堂がノックの音も聞こえず集中していたリツカに声をかける。
『い、いや。なんでもないよ。早めに勉強して対策しなきゃって思ってね。』
「いつになくやる気ですね。」
『まあね。』
どうやらバレていないようだ。
ホッとしてリツカは誤魔化しながら自然な動きでノートを鍵付きの引き出しへと戻した。