第19章 羽折れの天使
『......』
「都合が悪くなると黙りね......もういいわ出てってちょうだい。確か数日後校内模試か何かがあったわよね?そこで全クラス1位取れなかった時覚えてらっしゃい。すぐにでもあんな下賎な者達と縁を切ってもらいますからね!私が根回ししてないとでも思った?」
『......取ればいいんでしょ。』
「は?」
リツカは冷ややかな目を母親に向けると、皮肉げに笑って見せた。
『取りますよ。全クラス1位なんて。その代わりマイキーたちのこと"下賎な者"と言った事、絶対に前言撤回させてもらいますから。では失礼します。お母様』
「なっ!ちょっと待ちなさい!何よその言い方!リツカ貴方がその気ならこちらも相応の事をさせてもらうわ!」
『好きにすればいい』
「杏花にもよ!」
『......あの子は関係ない。手を出すようならいくらアンタでも絶対に許さない。』
「なっ!親に向かって!アンタって!待ちなさい!リツカ!リツカ!!」
止める母の声を背にリツカは内心イラつきながら部屋を出る。
すると、暗い表情をした東堂が部屋の前で銀のトレーを持って待ち構えていた。
『あ、東堂。』
「どうぞ氷嚢です。」
『ありがとう。うわ〜冷たっ。冬には触りたくないね〜夜のパーティーまでに腫れ引くかな。いやこれを口実に参加しないっていう手も.....』
「引かなかった時はメイクで誤魔化します。」
『ですよね〜でもありがとう。東堂。いつも気が利くね。』
「いえ。」
『どうした?暗い顔して。』
「お言葉ですが.....これ以上万次郎達と関わるのはおやめ下さい。」
『珍しいね。アンタまでもそう言うなんて。』
「お嬢様。アイツらと関わるようになってから生傷、いいえ大怪我が耐えない。増してや奥様の奇行も激しくなっている。俺らではもう手に負えません。このままではお嬢様は......」
『大丈夫。私が私であるためだもの。そんなこと苦じゃないわ。』
「それじゃダメなんだよっ.....俺はアンタを.....((ボソッ…」
東堂は唇を噛み締めて何かを悔しそうにすると、あんな後でも笑っているリツカを見つめた。