第19章 羽折れの天使
卍 卍 卍
────2005年
「リツカ!聞いているの!?」
パンッ!!
『え?』
「え?じゃないわよ!何この模試!数学が99点って!しかも全国2位!貴方万年2位じゃない!次こそは1位取りますって言ってなかったかしら!?何を考えてるの!?」
『は?』
意味がわからない。
微睡みの中にある意識を何者かによって無理やり覚醒させられる。
タイムリープの影響でグラグラつく頭を抱えながら、今の状況を把握するために周りを見渡すと、母の部屋でいきなりビンタをかまされていた。
『(何?どういう状況?)』
「貴方がお父様ならこんな無様は晒さなかったわ!!お父様の息子ならもっと完璧に!もっと特別にならなきゃ行けないの!他の子達と一緒ではダメなの!貴方は将来蒼葉グループの跡を継ぐ尊い存在なのよ!それなのに数学の模試が全国2位なんて!恥を知りなさい!」
パンッ!!
『ッ、すみません......お母様』
「謝ってればいいとでも思っているんでしょ!!」
パンッ!!
『いいえ....』
「黙りなさい!!この出来損ない!!せっかくのパーティの日になんて無様を晒してくれてるの!」
パンッ!!
『ッ!(今日はこのタイプか。下手に口答えしない方がいいな。てか前にもこんなことあったよな。何このデジャブ。)』
「はぁ。いいリツカ。あんな下賎な者との交流を今すぐ断ちなさい。あれらは私たちと生きてる世界が違うの。彼らは貴方と背負っているものが違う。」
『は?』
「貴方の肩には蒼葉グループだけじゃない。貴方のお祖母様のヴァイオレット家の命運もかかっているの。それを自覚しなさい。これは貴方だけの問題じゃないの。貴方には杏花や人にはない力を持っているわ。留学だって夢じゃないの!実際その話だって各国の有名高校から来ているのよ?それをわかってるの?」
母親はそう言うとさっきまで叩いていたリツカの頬を撫でる。