第19章 羽折れの天使
「オマエ。生きてたんだな。死亡したと聞かされていたからてっきり死んだのかと思ってたよ。」
『そうですか......』
「まぁ結果はどうあれオマエが生きていて俺は嬉しいよ。アイツみたいにまた大事な後輩を喪わなくて済んで。」
『そうですか.....』
「オマエが監禁されている間にした行動は全てお咎めなしだそうだ。まぁ状況が状況だからな。誰だってあの状況ならオマエと同じ判断をするだろうってよ。」
『そうですか......』
「でも助かったよ。オマエが命懸けで持ち出してくれた情報のおかげで東卍幹部数人をしょっぴくことが出来る。本当に俺も他の奴らもオマエに感謝してる。」
『そうですか......』
「......」
『......』
すっかり意気消沈しbotのように話すリツカに先輩は眉を顰めると、優しく頭に手を置いた。
「捕まってる間何があった?」
『先輩.....』
「ん?」
『どうしたら良かったんですか.....?』
「え?」
『私、妹も仲間も守れるために救うために警察官になりました。でも結果はどうでしょう。妹だけじゃなくて.....友だちもみんな殺されたんです.....みんなみんな死んじゃいました。』
「そういえば東卍はオマエが昔、所属していた族だったな。だからオマエが潜入捜査官に選ばれたんだもんな。」
『はい。例え警察に情報を持ち帰ったとしても.....もうみんなはいません。捕まえることなんてできないんです。私は遅すぎたんです。』
「!?どういうことだ。」
重々しく語る私を前に先輩は冷や汗を流しながら問いかける。
それもそうだ。
これでやっと凶悪犯罪者たちを捕まえられると思っていたのだから.....
『マイキー.....佐野万次郎の制裁が始まったんです。殺されました。林田春樹も林良平も松野千冬もみんな。次に殺されるのは三ツ谷隆や武藤泰宏たちでしょう。』
「制裁.....か。そうか......それは辛かったな。それでせめてでもアイツを連れ出したのか。」
『成り行きですよ.....私の力じゃありません。』
「でもオマエはこれ以上大切な奴誰1人死んで欲しくなかったんだろ?」
リツカはその言葉に何も言わなかった。