第19章 羽折れの天使
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ナオトがタケミチを取調室に連れて行って何時間.....いや何分経っただろう。
「【義姉さんは別の人が事情聴取します。僕はタケミチ君の事情聴取が終わったら合流するのでここで待っていてください。】」
そう言われ、簡単な事情聴取をした後
リツカは無機質な部屋に1人座っていた。
『(タケミチ無事かな.....それにしても何でタケミチが逮捕されなきゃ行けないの?)』
まさか警察官の私が事情聴取される側となり取調室に入るだなんてと皮肉な笑いがリツカの口から漏れ出し、静寂(シジマ)に消えるとこの部屋で一人ぼっちだといやでも知らしめられる。
まるで今までの混沌のした日々に帰ったような感じがした。
ここのところ忙しなくそして賑わいのある日々を当たり前のように過ごしていた。
でも今は違う。
無機質で生産性のない毎日。
そこには正義や悪なんてものはなくて、ただ現実だけがまとわりついてくる、ひとりぼっちの日々
私の中でいかに杏花と変わる前の東卍が大切だったかを思い知らされる毎日。
東卍は唯一の居場所だった
杏花はあんな家の中で私の唯一無二の希望だった。
それなのに12年の月日は変われない私だけを取り残して、大切なものだけを奪っていく。
『あの頃に戻りたいな.....((ボソッ…』
取調室でひとり寂しく座っているとがチャッと扉が開いた。
『あ、先輩.......』
「よぉ。蒼葉。いや今は"佐野"になるんだっけか?」
『そうですね。』
「無理やりか?」
『そんなとこです。監禁されてたのに合意なわけないじゃないですか。』
「......だろうな。こう言うのもなんだが元気にしてたか?」
『普通です。先輩こそお久しぶりですけどお元気でしたか?』
「オマエ......なんて顔してんだ。」
『そんな酷い顔してますか?』
ぎこちなく、そしてどこか悲痛な笑みを浮かべるリツカを前に先輩は悲しそうに表情に影を落とした。