第19章 羽折れの天使
「決まってんだろ。金の為だよ。」
あの八戒が実の兄である大寿を殺した?
それも金のために??
違う......そんなの違う!!
『そんな訳ない!八戒がそんなことするわけない!!』
「うお!?」
あまりの怒鳴り声に驚いた一虎が思わずブレーキを踏み、顔を真っ赤にして叫んだリツカに視線を向けた。
『八戒はそんな事する子じゃない。それは近くで見てきた私が一番わかってる!きっと何か事情があったはずよ。』
「事情ってなんだよ。」
『それは分からない。でも八戒は金の為だけなんかに家族を殺したりするようなする子じゃない!』
確かに12年後の彼は横暴で、図太くて生意気で怖いもの無し。性格は最悪だった。
でもそれは12年の時と環境がそうしてしまったもの。
全てが彼が悪いわけじゃない。
「昔のアイツがどうだったって殺したのは事実だ。何か理由があったとしても殺しは殺しだ。俺が真一郎君を殺したように。」
『......それでも私は八戒を信じる。』
「相変わらずだな。オマエのそういうとこ。」
『それより一虎。金の流れを断つってことは持久戦に持ち込むってこと?』
「ああ。千冬が居なくなった今俺たちにできるのはそれしかない。千冬は右腕である稀咲に決着をつけようとしていた。」
『......!つまり千冬は確実に稀咲に追い詰めてた。だから殺されたんだね。』
「稀咲を追い詰めた!?」
ええ!?と言わんばかりタケミチは驚いた顔をすると一虎を見やる。
「ああ。」
「どうやって.....あの稀咲を追い詰めたんですか?」
「ある日稀咲に殺された女たちの弟であり、旦那であると名乗る刑事が俺らと接触してきた。」
───────「【復讐がしたい】」
『(ナオトのことだ!)』
「(ナオトだ!!!)」
2人はお互いの顔を見合わせるとコクン!と頷く。
どうやら2人の想像していることは一緒なようだった。