第1章 始まりは最悪な形で
『ねぇ....私たちどこで間違えちゃったんだろうね....』
すっかり色あせ古びたお守りを握りしめながら、リツカはそう呟くとそっと電光掲示板から目を逸らす。
どこで間違えたなんて考えるまでもない。
答えなんてすでにわかっている。
きっと12年....いやそれよりも前のあの日からだ...
あの時から少しずつ私の中で何かがズレてきた。
そして12年前のあの事件で全てが変わってしまった。
東卍もみんなもそして....私も。
変わってしまった未来では、もうそのズレは戻すことは出来ない。
『こんなになるなんて思ってなかったな...私の人生...』
そう呟くリツカの手には見た目とは裏腹に白と黄色に彩られた菊の花束が握られている。
『時間すぎてるし.....迎えに行くか。』
腕時計を確認し、花を持ったまま電車に飛び乗ると、ある場所へと向かう。
向かった場所は駅から少し離れたどこにでもありそうなレンタルショップ。
そこになんの躊躇もなく入店すると、まるで誰かを探すように周りを見渡した。
すると、綺麗に陳列された棚の奥から女の人と聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「一体何度同じ事を言わせるんですかね〜〜?花垣武道く〜〜ん。
DVDは返却されたらすぐ陳列〜〜何度も言いましたよね〜〜?」
女の人はタケミチをギロリと睨みつけ、手に持った大量のDVDを陳列していき、隣で26歳にしては幼すぎる童顔の青年が苦笑いを浮かべ謝っている。
その様子にリツカはあぁまた怒られてるな....と呆れたような笑みを浮かべた。
「スイマセン」
「ハイ!謝るだけ〜〜!!」
そう怒鳴って「もう、上がっていいですよ。」と冷たく言い放つ女の人はどこかへと行ってしまうと、青年はガクッと肩を落とした。
「はぁ....」
『随分と大きなため息だな。タケミチ。』
「え?」
俯いていたタケミチが顔を上げると目の前に天使とも思える程の美しい顔がドアップで映る。
「うわ!?え?誰?何で俺の名前知って....」
『いや、何でって.....そりゃお前の友達だからだよ。』
女性らしい服に身を包み、綺麗な顔立ちをしたリツカを見てタケミチは思わず大声をあげる。