第1章 始まりは最悪な形で
卍 卍 卍
2017年7月4日 東京
「ねぇ、知ってる?【東京卍會】のこと?」
「知ってる知ってる....かなりやばかったらしいね。」
「アレだろ?屋台に突っ込んだってやつ。」
「何人か死んだらしいじゃん?やばいよなぁ〜」
『.....はぁ』
車と人が混在する街を歩きながら、スマホを片手に話をする女子高生たちを横目に青紫の瞳の女は今日も憂鬱な一日が始まったことに大きなため息を着く。
《続いてのニュースです。かねてより激化していた【東京卍會】の抗争がついに無関係の一般市民を巻き込む事態へと発展しました。》
人が往来する賑やかな街では数日前大事件を起こした東京卍會の話題で溢れ帰り、電光掲示板ではニュースキャスターが報道する声が響き渡る。
その声にピタリと立ち止まった青紫の瞳の女はまるで天を仰ぐように電光掲示板へと視線を向けた。
青紫色の瞳を持つ女の名は
蒼葉 六花(アオバ リツカ)
齢は26歳とまだ若いにも関わらず、凶悪犯罪組織【東京卍會】に潜入する警視庁の潜入捜査官のうちの一人である。
右耳に付けられた菊に盃の花札ピアスを風になびかせながら、電光掲示板を見つめるリツカの顔立ちはどこか日本人離れした顔立ちで、整った顔立ちをしている。
まるで天使のように儚くそして綺麗なその顔を見たものは皆口々に美しい....という程だ。
《この事件による負傷者は6名。内1名が病院に運ばれましたが死亡が確認されました。
その場で死亡が確認されたのは東京都渋谷区に住む、橘 直人さん 25歳と同じく橘さんの姉 橘日向さん26歳。そして橘 直人さんの婚約者である》
《蒼葉 杏花(あおば きょうか)さん24歳。》
そういうと画面に蒼葉杏花の、妹の写真が表示される。
その姿はリツカが知っているまだ幼さが残る妹ではなく、もう立派な大人の女性となった妹の姿だった。
────クシャッ!!
電光掲示板を見ていたリツカの手に握られていた花束が悲鳴をあげながら、数枚の花弁を地面に散らす。
『東京卍會っ....』
しかし、リツカはそんなことお構い無しに電光掲示板を冷たい目で睨みつけると地を這うような声で呟く。
しかしその瞳は悲しそうに揺れていた。