第17章 ハロウィンと隠し事
「では帰りますか。」
「帰ろ!帰ろ!」
『あ、うん。先生ありがとうございました。』
「お大事に。」
主治医にお辞儀をし、リツカと東堂は病院の扉へと向かう。
扉が開いた瞬間
秋から冬にうつろい始めた風が2人を取り囲んだ。
『うぅ.....寒っ』
「そりゃ冬間近ですからね。それにしても今日は一段と寒い。もう少し厚手のものを用意するべきでした。すみません。坊ちゃん。大丈夫ですか?」
『大丈夫。』
「......その割には震えてますけど?それに鳥肌も。寒いんですね?」
ギクッ!とバレたリツカは固まる。
『あ、いやぁ、そのぉ』
「昔っから寒がりですもんね。冬なんて外に出ることすら嫌がる。それに──────」
『はいはい。めっちゃ寒いです。』
これは延々と言われ続けるなと気づいたリツカは大人しく白状をする。
リツカの腕の鳥肌を見た東堂は呆れたようにため息をつくと自身の上着を脱ぎリツカへとかけた。
「これなら暖かいでしょ?」
『ありがとう......でも東堂が』
「僕の事は大丈夫です。どうせ後帰るだけなんで。でも坊ちゃんは三ツ谷のところに行くんでしょ?それなら暖かくしてないと。」
「え、お兄ちゃん。まだ帰ってこないの?」
『ちょっと三ツ谷に用事がね。』
「えー!!」
「では、帰りますよ。坊ちゃんはお気をつけて。」
『本当、有能な執事様だよ。杏花をお願いね。』
「お褒めに預かり光栄です。では、あまり遅くならないうちに帰ってきてくださいよ。ちゃんと迎えの連絡してくださいね。」
『はーい』
「いいですか!ちゃんと連絡してくださいよ!」
『わかってるって!アンタは私のお母さんか!』
「ッ!僕は貴女の執事です!奥様と一緒にしないでください!!」
『え、あ、ごめん。(そこまで嫌がるとは....)』
「あ、いえ!そう意味で言った訳ではありません。奥様と一緒にされるのは恐れ多いというか.....とにかくそういうことです。声を荒らげて申し訳ありませんでした。」
『うん。じゃあ私三ツ谷の所に行くね!』
「はい。行ってらっしゃいませ。"お嬢様"」
車で走り去る東堂を見送るとここからさほど遠くない三ツ谷の家へ向けて歩き出した。