第17章 ハロウィンと隠し事
卍 卍 卍
『よし。こんなもんかなぁ。』
「本当に忘れ物はありませんね?」
『うん。たぶん......』
「多分ってお兄ちゃん......」
「だろうと思いましたよ。とりあえずもう一度見回りをしてから帰りましょうか。その間に坊ちゃんは着替えてきてください。」
手渡された久々の男物の私服を受け取ると、身支度を東堂に任せ、着替えを始める。
そう。今日は待ちに待った退院日なのだ。
暑かった夏の面影が無くなり、秋空が冷たい風を靡かせる絶好の退院日だ。
「忘れ物は特にありませんでした。坊ちゃんは着替えましたか?」
『うん。着替えたよ。』
「では部屋を出るとしますか。」
あんなに重い荷物を軽々と持ち上げた東堂はリツカのために部屋のドアを開ける。
つくづく思うが黒龍の鬼神とすら呼ばれたあの不良がよくここまで執事らしくなったなと感心しながらリツカが部屋を出ると薬を持った主治医が立っていた。
「今日で退院だな。」
『そうですね。お世話になりました。』
「くれぐれも無理するなよ。後遺症のこともあるんだから。」
『わかってます。』
「そう言ってお兄ちゃん大人しくした試しないよね。」
『杏花!シッ!』
「はぁ。執事さんもこの子を見張っててください。この子に残った後遺症は決して軽いものではありませんから。」
「承知しております。今回の後遺症のこと、聞いた限りでは激しい運動を容認できるようなものではなかったので。」
「心配です。無茶ばかりする子ですから何しでかすか。」
「全くもってその通りでございます。」
だよねーみたいな雰囲気を出しながら会話をする主治医と東堂にムッとしながらも差し出された薬を受け取る。