第17章 ハロウィンと隠し事
恐らくリッちゃんはこの先一生マイキー君達にこの後遺症のことは言わないつもりなのだろう。
必死に隠して、彼らを騙し続ける。
喧嘩だって無理にするつもりなのだろう。
きっとそれが彼女自身を危険に晒すことになったとしても。
それは彼らが大切だから......
リッちゃんは俺が知らないだけで過去でも未来でもたくさんの宝を奪われ、失ってきた。
目の前で傷つき壊れる瞬間を何度も何度も。
だからこそもう誰にも傷ついて欲しくないのだ。
大切だと思っていたものが簡単に掌からこぼれる感覚を知っているから......
彼女は嘘つきな天使へとなり続ける。
「そういえば退院っていつなの?」
『これがあったばっかりだし、先生はまだしばらくは入院してて欲しいみたい。』
「じゃあ退院はまだ先になるの?」
『いや。明日無理やり退院もぎ取ってきた。』
「無理やりって.....でもまぁ一応おめでとう。」
『ありがとう。暇なんだもん。それに明日は三ツ谷の家に行く予定があるから。これは絶対外せない用事なの。』
「三ツ谷君の?何があるの?」
『ちょっと野暮用』
そう言ってリツカは内緒と言わんばかりに自身の口元に手を当てた。
「1人で大丈夫なのか?」
『明日は東堂が来てくれるから大丈夫だよ。』
「そっかなら良かった。本当に無理すんなよ!」
『大丈夫!しないって!』
約束な。そう言ってタケミチは立ち上がると「またな」と挨拶をして出ていく。
そんな彼を笑顔で見送ると己の掌へと視線を向ける。
『絶対にバレないようにしないと......』
点滴に繋がれた己の手を見つめそう呟いたリツカは少し寂しげな表情を浮かべていた。