第17章 ハロウィンと隠し事
「それじゃあお大事にね」
『ありがとうございました〜』
パタン.....部屋のドアを閉じると閉ざされた扉に手を当て唇を噛み締める。
『(想定内だったとはいえ、結果がコレか.....いざ突きつけられるとツラいな。)......クソッ』
ズキンっと胸に痛みが走り、服を握りしめ、感傷にひたっている中クイクイっと弱々しく服の袖を引かれた。
『?』
「リツカお姉ちゃん!ご本読んで!」
そう言ってきたのは、可愛いとは思えるもののお世辞にも健康そうではない青白い肌に手編みのニット帽を被った女の子がリツカをキラキラした目で見つめ本を差し出す。
彼女の名は陽花莉(ヒカリ)
ここは小児病棟でもあるため様々な子達が入院しており、少し年上で容姿端麗なリツカにみんな興味津津だったのだ。
『......』
「お姉ちゃん?どうしたの?顔色悪いよ?」
『!あ、ううん!なんでもない!いいよ。ご本読もっか!いつもの広場にいこう。』
「うん!早く早く!!」
『慌てないよ。危ないから。』
小さな手に引かれながら着いた広間には数人の少年少女たちが既に集まっており、リツカが現れるのを今か今かと待ち遠しく待っていた。
「リツカお姉ちゃん来た!」
「わぁ!早くご本読んで!」
『はーい。読むからみんな座ってね。』
リツカは用意された椅子に座ると本当の題名を読み上げる。
『青紫の鳥と孤独の王』
この話は青紫の瞳を持った鳥が孤独で臆病な王様と旅をして孤独を埋めていき最終的には孤独な王を幸福な王にするという話だ。
『────そして孤独の王様と鳥は幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。』
「面白かった!!」
「もっかい!もっかいよんれ!!」
『わわ!みんな落ち着いて、落ち着いて!』
「取り込み中の時に悪いな。」
子供たちとの声に混じり聞きなれた声がリツカの頭上から聞こえてくる。
視線を向けるとそこには紙袋を持った三ツ谷ともうすっかり冬服に身を包んでいるドラケンが立っていた。