第16章 小さき眠り姫
「ようやく泣き止んだな。あーあ、せっかくの美人が台無しだな。」
『グズ......ヒクッ.....グズッ......ねぇシン兄......ここはどこなの?』
暫く泣いたリツカは落ち着くとずっと疑問に思っていたことを真一郎に問いかける。
「あの世とこの世の狭間【三途の川】って聞いたことがあるだろ?そこだよ。」
『え、でも川なんてどこにも.....』
その瞬間
真っ白だった景色が一変し、急に空は瞬く間に侵食され夜のように暗くなり、目の前には赤い橋がかかった川と川岸一面に咲く彼岸花が現れた。
「ここを渡ってしまえばオマエは死ぬ。」
『.....そっか。私死んじゃうんだ。』
マイキーを残して......
きっと彼との約束を違え、残して死んでしまう私は地獄なのだろう。
闇に抗うことの出来ない、羽のないこの体には。
でも不思議と怖くはなかった。
だってどうせ人間はいつかはいずれ死ぬし、警察になってからも、タイムリープを始めてからもいつ死んだっておかしくない日々を送っていた。
怖くなんてない。受け入れれるはずなのに......
どうしてだろう。
今はこんなにも死ぬ事が惜しい。
彼を置いて行ってしまうことが。
彼との約束を反故にしてしまうことが。
全てが惜しくて、
でも1番は、この想いを彼に伝えれずに朽ち果てることがこんなにも悔しくて......こんなにも寂しいだなんて思ってなかった。
「怖いか?」
『ううん。シン兄が居るから怖くないよ。でもちょっと悔しいなっ......』
涙が浮かぶ瞳で無理やり笑ってみせるリツカに真一郎はどこか悲しそうな顔をして俯く。
「そうか.....じゃあ行くか?」
『......うん。』
差し出された手にリツカがゆっくり手を重ねようとした時だった。