第16章 小さき眠り姫
「おう。久しぶりだな。」
『そ、うだね......』
「元気にしてたか?」
『っ!』
「また無茶したのか?本当にオマエは昔から頑張り屋だな」
『〜〜っ!』
「見ない間に随分と美人になったんじゃないのか?」
『〜〜〜っ!!シン....兄』
「どうした?リツカ!」
『シンに"い"ぃ"ぃぃぃ!!』
まるでずっと痛みを我慢していた子供のようにリツカの瞳から次々と涙が溺れ落ちる。
あの日から2年......10年......12年。
我慢し続けてきた。
ずっと後悔していた。
ずっとずっと謝りたかった。
ずっとずっとずっと会いたかった。
そんな気持ちが一つまた一つと封じ込めたはずの心の奥底から止めどなく溢れ出す。
『ごめんなさい!ごめんなさい!シン兄!!!私のっ、私のせいでシン兄があぁぁ』
「ん。リツカ。おいで」
『ずっと謝りたかったっ!!あの時私が引き止めてなかったらっ、シン兄は今も生きてたかもしれないのにっ!!私がっ、私が引き止めたせいでっ!シン兄はっ......ごめんっ、ごめんなさい!ごめんなさいぃぃぃ!』
「オマエのせいじゃねーだろ。だからそんなに泣くな。今までよく我慢したな。リツカ。」
真一郎は小さなリツカを抱きしめると、優しくリツカの頭を撫でる。
その手はあの時のように冷たくはなくとても暖かくて、リツカの瞳からまた雫がこぼれ落ちる。
「2年間辛い思いをさせて、俺の死を背負わせてゴメンな。リツカ。今までたくさん俺の代わりに頑張ってくれてありがとう。」
『〜〜〜〜っ!あ゙あ゙ああぁぁぁ!!』
涙が次から次へと堰を切ったようにこぼれ落ち、真一郎の肩口を濡らす。
こんなに声を上げて泣いたのはいつぶりだろうか。
そんなリツカを真一郎は拒むことなく受け入れ、そして優しく抱きしめる。
リツカは真一郎の背中に腕を回すと、服をキツく握りしめわんわんと泣いた。