第16章 小さき眠り姫
卍 卍 卍
『あれ....ここどこ?』
リツカが気がつくと目の前には闇が拡がっていた。
見渡す限り何もなく、暑くも寒くもない空間。
あれ.....私、あれからどうなったんだっけ?
そっか私、一虎に刺されて.....
マイキーと一虎を止めて.....
それでどうなったんだろ......
自分が生きているのか死んでいるのかさえも分からない。
ただそこに闇だけがあるだけだ。
『おーい!誰かいないのー?』
少しでも不安を紛らわせるように叫ぶ。
でも声は反響するどころか返事は返ってこない。
リツカははぁとため息を着くと真っ白なワンピースを翻しながら歩き出す。
あれだけ痛かった背中も、あれだけ力が入らなかった足も今は羽のように軽い。
『(こんなに歩いてるのに足がまったく痛くない.....刺された背中も痛みを感じない。)』
ここは一体どこなんだろう.....
辺りを見渡すが何も無い。
すると、暗闇の遥か彼方に一筋の光が見えた。
それに吸い寄せられるようにリツカは軽い足取りで向かっていく。
暗闇をぬけ、光の中に入るとまた何も無い真っ白な空間が広がっていた。
『何も無い......』
─────チリン
「リツカ」
『!?』
懐かしい声と鈴の音が後ろから響いた。
もう二度と聞くことが出来ないと思っていた低く澄んだ声。
もう何年も何年も聞いてない声。
それでも聞き間違えるはずがない。
あの人の声だ。
リツカは震える手を胸に押さえつけながら振り返るとそこにはあの時目の前で死んだはずの真一郎の姿があった。
『シン....兄?』
声が震えた。
自分でも驚くほどに震えていた。
それは緊張からなのかそれとも嬉しさからなのか、リツカにはもう分からなかった。