第16章 小さき眠り姫
「しかし、2人とも未だに予断を許さない状況です。」
【え......】
その瞬間
その場の全員の拳から力が抜け、全身から血の気が引く感覚が襲う。
「女性の方は、損傷している状態で激しく動いたせいで傷が裂けた上、何分出血の量が多く。もしかしたら今夜がヤマかもしてません。覚悟しておいて下さい。」
「男性の方は殴られた所が悪かったみたいで処置はしましたが、2人とも目覚めるのが明日かもしれませんし、大変申し上げにくいのですがこのまま目覚めない可能性も.....」
申し訳なさそうに告げる医師を前に誰もそれ以上口を開けなかった。
嘘だろ?このまま目覚めない?
それに今夜がヤマって.....
その場の全員から喜びの表情が消える。
「そんな......」
「マイキー君!」
「嘘だろ......」
中でもマイキーのショックは激しく、地べたに膝をつき、絶望を表情を浮かべていた。
すると、酸素吸入器を繋がれたリツカと場地が運び出された。
「リア.....場地....」
マイキーは小さな声で彼女の名前を呼ぶと立ち上がりフラつきながらリツカと場地に近づき頬に手を伸ばす。
「っ!」
しかし、すぐに戸惑うように手を目の前で止めるとキツく手を握りしめ手を引っ込めようとした時だった。
『マイ、キー.....』
「ッ!?リア!」
目覚めないそう言われたはずのリツカの意識が少しだけ戻ったのだ。
『泣か、なぃで.....わ、たしなら、大丈夫.....だから。』
弱々しくも伸ばされた手がマイキーの元へと伸ばされ、彼女はただ優しい笑みを浮かべるとまたすぐ意識を失った。
力を失い落ちそうになった手をマイキーは急いで繋ぎ止めると輸血したばかりだと言うのに肌は青白く、氷のように冷たくなった手を額に当てた。
「ゴメンっ.....ゴメンッ!リアッ!」
また意識を失い、魂の無い蝋人形のような彼女を前にマイキーはただ己の無力さを呪い届かない耳に何度も謝罪の声を漏らす。
「俺のせいでゴメンな。」
次第にポタポタとマイキーの瞳から涙がこぼれ落ち、
人前でけして泣かないはずの彼の涙を前に誰もが唇を噛み締め涙を流した。
その姿があまりにも痛々しかったからだ。