第16章 小さき眠り姫
壊れた人形のように光の無い瞳で暴れ回るリツカを前に俺たちは何も出来なかった。ただ暴れ回るアイツを押さえ付けることしか出来なくて、焼け爛れた腕を見る度に俺たちは己の無力さを思い知らされた。
あとから知らされたことだったがリツカは親から虐待を受けていたそうだ。
それだけではなく幼い頃に身代金目当てで誘拐され、3ヶ月ものの間監禁、酷い暴行受け、食事もまともに与えられず、終いには口封じのために本当に殺されかけたことがあったらしい。
何とか命からがら逃げだしたものの、そのせいでリツカの中に自分でも制御ができないほどの強い破壊衝動が生まれたこと。
俗に言う多重人格者になったこと。
そして、目的の為ならば自分が壊れることへの恐怖が欠如したことを教えられた。
「誘拐?ですか」
「ああ。リッカは表向きはあの有名な蒼葉グループの跡取り息子だからな。昔からよく金目的で命を狙われてたんだよ。」
「リッちゃんがあの有名な.....あ、あ、あ、蒼葉グループの跡取り!!!???」
「なんだよタケミっち知らなかったのか?アイツ蒼葉グループの御曹司で後継者なんだよ。女だけどな。」
「と、東卍にそんな名家のお嬢様がいるなんて知らなかったっす。それにお嬢様ならなんで不良なんか....」
「「......」」
「アイツの家庭環境なんて親がいねぇ俺から見ても最悪だからな。」
「家庭環境っすか?」
「ああ。」
苦しそうに告げられたドラケンの声にタケミチはただ眉を顰めることしか出来なかった。