第16章 小さき眠り姫
「【うわあああっ!】」
「【ば、バケモンだろ!】」
「【なんであの怪我で動けんだよ!】」
廃工場内で響く叫び声と血の匂い。
もう2年も前のことなのに全部が鮮明に思い出される。
【リツカが誘拐された。】
そう聞いた俺たちが助けに向かうともうそこはもう血の海だった。
『【....られる前に....殺らなきゃ.....殺られる前に......死ね......死ね......死ね!!!!】』
殺戮をプログラムされたロボットのようにリツカは何度も何度も男たちを殴りつけていた。
その身体はボロボロで、明らかに酷い暴行を受けた痕が残っており、どちらともつかない血が付着していた。
「【リア!】」
「【やめろ!!リッカ!オイ!?しっかりしろ!!俺たちの声が聞こえねぇのか!?】」
「【俺らだ!リアァ!!もういい!暴れんな!】」
「【ダメだ!パー!リッカを抑えろ!!】」
「【お、おう!やめろっ!リッカ!もう暴れるな!】」
『【ッ!?離せ!!離せえぇぇ!あ゙あ゙あ゙あぁぁっ!触るなアァァ!!オレに触るなああぁ!!】』
ビッ!!
「【い゙っ!!】」
パーチンに羽交い締めにされ、暴れ出したリツカの爪がパーチンの頬をかすり、血が滲む。
「【リッカ!!やめろ!!もうやめろって!相手が死んじまう!パーちん!ちゃんと抑えろよ!!】」
「【抑えてんだろ!!そういうならオマエも手伝えよ!一虎!】」
『【殺す.....殺す!!離せえぇ!!殺られる前に殺してやる!!殺してやるゔゔぅぅ!!!】』
何度か理性を失って暴力的になることはあった。
でも、マイキーや場地が声をかければすぐに理性を取り戻していたし、その日までは俺たちは何の問題もないと決めつけてた。
─────でも、それは大きな間違いだった。