第15章 血のハロウィン
「一虎......」
「触るな!!」
『一虎!お願い。私の目を見て!』
「.....ッ!」
カラン。リツカは鉄パイプを地面に落とすと一虎の前にしゃがみ、濁った瞳をのぞき込む。
一虎はゆっくりとした動きでリツカに視線を向けると、リツカはにっこりと微笑み、後頭部に手を当て自分の額と一虎の額を擦り合わせ、目を瞑る。
これは昔リツカが興奮して暴走する一虎に行っていたおまじないだった。
『大丈夫だよ。一虎.....私はあなたを裏切らない。何度も言ってるでしょ?大丈夫。裏切らないよ。1人にしないから安心して。』
「リッカ.....」
『大丈夫。大丈夫。ほら、もう怖くない。一虎、ゆっくり息をして。ね?』
怒りからなのか震えていた一虎の肩がゆっくりと落ち着き、少しだけ冷静さを取り戻した彼の身体が弛緩していく。
リツカはそれを確認すると、またにっこりと微笑んで鉄パイプを拾うと場地の元へと向かった。
『圭介。大丈夫?』
「リアァ!オマエ血が.....何で俺なんて庇った!危ねぇだろ!!」
白い特服を赤く染め上げるほど血を流しているというのに素知らぬ顔をして立つリツカを前に場地が怒鳴り声を上げ顔面を蒼白とさせる。
『怒らないでよ。圭介が傷ついたらみんなが悲しむでしょ?それに仲間を庇うのは当たり前だから。』
「それはオマエも一緒だろ!庇うのが当たり前だとしても拳じゃねーんだぞ、相手は刃物だ!刺し所が悪けりゃ死ぬ可能性だってあったんだゾ!わかってんのか!!」
『大丈夫だって。ほらオレって昔っから運だけはいいでしょ?だから大丈夫だよ。』
「それとこれとは話が違ぇ!!もしもの事があったらどうしてたんだよ!!」
『もう、怒らないでよ。さっきも言ったけど急所は外したし、かすり傷だよ。全然痛くないよ。』
「本当だろうな?」
『こんなことで嘘つかないよ。つく意味ないし。それより圭介は怪我ない?』
「ああ。」
一虎は圭介を殺さずに済んだ。
これで未来は変わるはずだ。
代わりに刺された背中は痛いが、そんなのどうだってよかった。
これでドラケンが言っていた未来には行かない筈だ。
その安堵感からリツカから一瞬力が抜けた。