第3章 タイムリープと決意
リツカ達の両親はけして褒められる親ではなかった。
権力と金の事しか興味がなく、言うことを聞かなければ殴りつけ、挙句の果てには道具としてしか見ていない父。
自分を愛してくれる理想の息子を作ることに固執し、性的暴行未遂、気に入らなければ手を挙げる母。
女として生まれてきた私を両親は酷く軽蔑し、男のように振る舞わせ、出来なければ
「お前さえ生まれて来なければ...」と罵り、暴力を振るわれたことだって数え切れないほどある。
両親にとって子供はアクセサリーのようなもので、都合のいい道具としか考えていない。
リツカのスキルアップに惜しみなく財力を使うが、実際2人が自分たちを心から愛してくれた事なんて1度もなかった。
いつも自分たちのためでしかない。
それが2人の親だった。
『(そっか.....12年前に戻ってきたって事は.....またこの家で生活しなきゃなんだ....)』
グッとリツカは爪が食い込むほど拳を握ると悔しそうに唇を噛み締めた。
逃げ出したいと脳内に毒が回る。
早くマイキーに会って逃げてしまいたい。
帰りたい。息が上手くできない。苦しい....
地獄を見るくらいならいっそ諦めてしまおうかと考えが過ぎった。
『(過去に戻ってきても...私は私なんだな...)』
ハハ...と皮肉げに乾いた笑い声を零す。
「お兄ちゃん?急に笑ってどうしたの?」
『...ううん。なんでもない。』
心配させまいとリツカはできるだけ優しい笑顔を杏花に向ける。
それを見た杏花は少し不満そうな顔をするとギュッ!とリツカに抱きついた。
「お兄ちゃん!無理しないでよ....無理に笑わなくてもいいんだよ?」
『!?』
そう言われた瞬間
いっその事吐き出してしまおうかと口を開く。
しかし、リツカは我慢するように口を深くとざす。
『杏花....』
「杏花はね、お兄ちゃんに無理して欲しくないの。お兄ちゃんはいつも杏花に大丈夫だよって言うけど、知ってるよ?お兄ちゃんが部屋で泣いてるの.....だから、杏花の前では無理しなくていいんだよ?泣いてもいいんだよ?」
『ッ!.....(もう本当杏花には敵わないや.....)』
ムッとする杏花にリツカはあははと笑い出すと、優しく抱きついた。
その目には薄らと水の膜が張っている。