第3章 タイムリープと決意
卍 卍 卍
『ハッ!』
全身の痛みに目を覚ます。
どうやらあれからだいぶ時間が経っているようで、母親の姿はもうなかった。
おそらく東堂か侍女長辺りが私から引き剥がし、別室に連れて行ったのだろう。
遠くでまだ声がする。
『痛たた....ボカスカ殴りやがって....』
痛む身体に鞭を打ち起き上がると
「お兄ちゃん!」と声と共に杏花がこちらを心配そうに駆け寄ってきた。
『え....杏花?』
「"え....杏花?"じゃないよ。お兄ちゃん。早くケガ手当しないと!」
『へ?ケガ?』
なんのことだか分からない
突然の展開にん?と首を傾げていると杏花は心配した様子でリツカを見つめた。
「お義母さんにまた殴られてたから....」
少し脅えた様子の杏花がリツカの額を撫でる。
リツカはその手に誘導されるように自分の頬を撫でると血が流れていた。
あ、そっか。タイムリープして早々殴られたんだっけ。と。
1人冷静に状況を理解すると心配そうに見つめる杏花に視線を向ける。
杏花の目は少し赤くなっておりどうやら恐怖から泣いたのだろうと容易にわかった。
どうやらこの傷はさっきのせいで出来たらしい。
杏花に詳しく話を聞けばこうだ。
集会を終え家に帰ると、帰りが遅いことに痺れを切らした様子の母親が部屋に呼びつけ、いきなりリツカの頬を殴ったらしい。
どうやらリツカが帰ってくる前に父親と母親はケンカをしていたらしい。
内容は想像しなくても容易にわかる。
リツカの性別と杏花のことについて言い合いになったのだろう。
父は杏花の母を事を大変好いており、杏花には異常な愛情を注いでいる。
しかし政略結婚した母の事、その子供であるリツカのこともどうでもようで、会う度に喧嘩しているのだ。
今回もそのとばっちりを受け、今に至る。
というのが事の顛末らしい。
それを聞いて一番最初に浮かんだ言葉は『やっぱりか』という単語だった。
「お兄ちゃん本当に大丈夫?」
『見た目より痛くないから大丈夫。お前が心配することじゃないよ。』
「お兄ちゃん....」
ヨシヨシと杏花の柔らかい髪を撫でる。
杏花はその行為に涙を流すと、声を上げて泣き始めた。