第3章 タイムリープと決意
杏花はいつもそうだ....
壊れかけの私に優しく手を差し伸べてくれる。
父親の理不尽な暴力と願望、母親の過度な期待と性的な目.....
何もかもが地獄みたいな日々で、東卍と妹だけが私の光だった。
でも12年後私はこの光を失ってしまう。
それも一瞬にして.....
『(...嫌だなぁ...杏花は死ぬべき人じゃなかった。本当なら私なんかよりずっと生きて、幸せになるべき人だった。)』
私は私を救ってくれた人に何ができるだろうか...
いや、今考えたってどうにもならないだろう。
今の私にできることは...1つ。
12年前この手から零れ落ちてしまった大切なものを今度は落とさないようにすることだけだ。
そのためなら悪魔にでも、死神にでも命を差し出そう。
たとえこの身が滅ぶことになったとしても、私は私の大切な人に生きていて欲しい。
『ありがとう。杏花。でもオレは大丈夫だから。だから、心配しないで。』
そう言って笑うその顔は何かを決心したような顔をしていた。
「おに───『ごめん!杏花。留守番頼めるか?オレちょっと用事があるからさ。会いに行かなきゃ行けない人がいるんだ。』
「.....わかった。」
真剣な顔のリツカを見て杏花は頷く。
リツカは『ありがとう。』と優しく呟いて、その場から駆け出した。
彼が、タケミチが呼んでいる。
タケミチにこの思いを伝えなければいけない。
そう思ったからだ。
火照る身体を無理矢理に動かして、リツカは無我夢中でネオンと夜の帳に覆われた街を走り抜ける。
すると、ネオンに彩られた街でタケミチの背中が見えた気がした。
『タケミチ!!』
「!!リッちゃん!」
2人はお互いに駆け寄る。
ハァハァと荒い息を整えると2人はお互いに顔を見合せた。
「『あの!!』」
「リッちゃん。俺、現代じゃヒナと付き合ってもないし、救うギリだってない.....でもアイツは死んじゃダメだ。救いたいんだ!」
『私もだよ....杏花も私の大切な人も皆、死ぬべき人じゃなかった。私はもう誰も失いたくない。
だから────』
【 私 / 俺 に力を貸してください!!!】
そう言った2人の目はさっきまでの恐れはなくただ青い炎だけが宿っていた。