第3章 タイムリープと決意
卍 卍 卍
『ん....んん』
微睡みの中にある意思を無理やり覚醒させ、目を開ける。
タイムリープの影響でグラグラつく頭を抱えながら、今の状況を把握するために周りを見渡した。
煌びやかなシャンデリアに高級なアンティークの椅子と机。
全てが見覚えのある物でここが母親の部屋だと理解するには差程時間がかからなかった。
『(どうやら成功...したみたいだな。)』
部屋にかけてあったカレンダーは2005年と記してある。
あの時と同じ12年前だ。
成功したことにホッと息を吐くと、耳を指すほどの怒号が鳴り響いた。
「いい加減にしなさい!リツカ!!」
───パンッ!
『え?』
頬に衝撃が走り、倒れたリツカは咄嗟に自分の頭上に視線を向けると、顔を真っ赤にした母親がこちらを睨みつけていた。
一瞬何が起きたか分からなかった。
しかし、頬の痛みに自分は目の前の女に殴られたことを嫌でも理解させられる。
その瞬間ヒュッと喉が鳴った。
「お前は男だって言ってるじゃない!ママの言うことを聞いてよ!貴方は王子様なんだから少しはそれらしくしなさい!あんな不良たちと一緒に居ないでママの言う事だけ聞いてればいいの!」
『っ!?』
怒号を撒き散らす母親はそう言って愛用している靴べらと何度も何度も殴りつけた。
蒼葉グループの御曹司として自覚のこと
家族に興味がなく滅多に帰ってこぬ父のこと
男としての振る舞い方
マイキー達とつるんでいること
何度も罵りながら私を殴る。
靴べらがバキッ!と音を立てて割れた頃、母ははぁはぁと息を荒くしながら、リツカに向かって追い打ちをかけるようにワインボトルを振り下ろす。
────バリンッ!
『いっ!』
「いい!?リツカ!貴方は蒼葉財閥の御曹司なの!ママの王子様なの!あの人みたいにならないで!」
『....』
「お願いよ。貴方だけはママを捨てないで....杏花にもあの不良たちにも関わらないで。お願いよ。貴方だけはママを裏切らないで。ママの王子様でいて....リツカ」
『あぁ....本当に過去に戻ってきたんだ....(あぁどうしよう....息ができない....)』
ヒステリックを起こした母の腕に抱きしめられ、体をまさぐられながら意識が遠くなる。
リツカは何処か苦しそうに呟くと意識を手放した。