第14章 嵐の前の静けさ
卍 卍 卍
2005────10月30日
『あ、』
「あ?」
『圭介もここに呼び出されたんだ。』
「おー。千冬からな。オマエは?」
『タケミチから。』
歩道橋の最高段を登り終え、視線をあげると不機嫌そうな場地が立っていた。
『ついに明日だね。』
「そうだな。......リアァ。オマエ本当にいいのか?戻るなら今だゾ。」
『.....圭介。何度も言ってるでしょ。私たちはどうせあの日から戻れない。なら堕ちるところまでとことん貴方達と堕ちるって。だからそんな顔しないでよ。私は圭介の笑ってる顔が好きだよ。』
「.....ほんと、オマエには適わねぇな。」
場地は頭をガシガシとかくと、鉄格子に身体を預けて空を見上げる。
「でも、ありがとな。リアァ。」
場地がそう言った瞬間、遠くから東卍の特服を来た4人組が歩いてきた。
「急に呼び出してすみません。」
「千冬ぅ───。殴られたんねーの?」
「場地君!?」
『何しに来た。海國、海寿。また殴られたいの?』
「リツさん!?」
「隊長!?」
ニヤリと笑う場地と冷たい目をしているリツカを前に4人はゴクリと固唾を飲む。
「稀咲のシッポ掴めました?」
「あン?」
『(流石と言うべきか。千冬も海國も海寿も私たちの狙いがわかったんだ。)』
「東卍の為にスパイやってるんスよね?」
「俺らなりに調べて稀咲がやべーやつだってわかりました。だからもう芭流覇羅にいる必要ないっスよ!」
食い気味に話す千冬に場地もリツカも冷たい視線を向ける。
わかってしまったのなら仕方ない。
でも今更私たちには戻るという選択肢はなかった。
一虎を見捨てることなんてできないのだから。