第14章 嵐の前の静けさ
『嫌だっ!嫌!やめてよっ!何でこんなこと!』
「なんで?オマエは俺のモノだろ?」
『いやっ!やめ────見ないで.....!』
「は?」
マイキーの前にさらけ出されたリツカの身体には胸に巻かれた真っ白なサラシと無数の赤い花が咲いていた。
「リア」
『ヒッ!』
マイキーはおもむろに手を伸ばすと、首や胸にありありと残る花の1つを撫ぜる。
冷たい瞳に冷たい手、恐怖に支配されたリツカは思わず短い悲鳴をあげた。
「誰にやられた?」
誰にやられた?誰になんてすぐに分かる。さっき半間とその会話したばかりなのだ。犯人は一人しか居ない。
────── 一虎だ。
一虎はあの日以来からリツカに身体を求めることは無かったが、その代わりにまるでリツカが自分の所有物というのを周りに見せつけるようにシルシをつけていたのだ。
隠し通すつもりだった。
一虎のモノになる事はマイキーへの最大の裏切りだとわかっていたからだ。
赤い花がこの身に咲く度にこの花がまるでマイキーを裏切った戒めのように感じていた。
「一虎か.....」
『......』
「オマエ女だったんだな。」
『だから....だから見ないでって言ったのに.....』
タンザナイトの瞳から涙の雫がこぼれ落ちる。
女だってバレたくなかった。
この醜くなってしまったこの体も全部全部彼に見られたくなかった。
彼と出会って、彼の傍に居たくて何年も隠し通してきたのに、こんな形でバレてしまった事にリツカは涙を流し、マイキーの胸板を押した。