第3章 タイムリープと決意
「"佐野"と"稀崎"2人は12年前の8月に出会っています。どちらか一方と接触し、行動を共にしてその出会いを止めてください。」
「おう....何とかしてみるよ。」
『任せて。わた...ううん。オレ達が何とかしてみせるよ!』
「頼みました。タケミチ君、義姉さん。君たちにしか姉たちは救えない。」
ナオトはスっとタケミチに向かって手を差し出す。
ゴクリッ。その場に緊張が走りタケミチは固唾を飲むと恐る恐るナオトと握手をする。
すると、まるで電池の切れたおもちゃのようにバタンッ!とその場に音を立てて倒れた。
『タケミチ!?』
「どうやら行ったみたいですね。」
『そっか。次はオレの番だね。』
「義姉さん...さっきも言った通り義姉さんは自由に帰ってくることができません。義姉さんにとってあの日々は苦痛そのものです。それでも行くんですか?」
『.....オレさずっと逃げてばっかりだったんだ。親からも妹からも仲間からも.....逃げて逃げて逃げて、そうしたら最後には全部失った。』
「.....」
『オレはもう誰にも死んで欲しくない。悲しい思いも苦しい思いもして欲しくないんだ。だからオレは行くよ。たとえ帰って来れなくなったとしても。辛い日だったとしてもね。』
「.....本当にいいんですか?やっと女性になれたのに.....未来に戻ったら義姉さんはまた男として生きなければならないんですよ!?」
『上等だよ。覚悟の上だ。』
「......わかりました。」
『とりあえずマイ.....佐野万次郎に会いに行ってみるよ!』
心配そうに顔を歪めるナオトにリツカはにっこりと笑うと首につけていた指輪を外し、左手の小指につけるとナオトに差し出した。
「義姉さん。頼みました。」
『うん!』
ナオトと小指を絡め会った瞬間
意識の奥でパリンッ....とガラスが割れる音がした。
すると瞼が重くなり、意識が暗転した。