第14章 嵐の前の静けさ
ドンッ!!と誰かとぶつかり、打ち負かされたリツカはその場に尻もちを着く。
『あ、すみませ─────』
謝ろうと顔を上げると冷水を被ったように背筋が寒くなり、恐怖から冷や汗が滲み出た。
目の前にいたのはマイキーだった。
「はぁ?なぁ、なんでリアがここに居んの?」
『.....』
「黙っててもわかんないんだけど。」
マイキーはそう言うとリツカの手を掴もうと手を伸ばす。
しかし、リツカはそれをパンッ!と跳ね除けると自分で立ち上がる。
『マイキーには関係ないでしょ。オレこれから一虎と会う約束してるから通して。』
「はあ?」
マイキーの声音が一気に冷たくなる。
恐る恐る顔を見ると怒りに歪められた顔がリツカを見下ろしていた。
「関係ないってどういう意味?」
『オレは......もうマイキーのモノじゃない。一虎のモノだから。』
「一虎のモノってどういう意味だよ」
今までに聞いたことの無い冷たくドスの効いた声に身体が震える。
恐怖からマイキーの顔が見えず俯くことしか出来ずにいた時だった。
「チッ!なんで答えねぇんだよ」
地を這うような声が聞こえ、突然身体が引っ張られるとガンッ!!と壁に手荒く叩きつけられ、逃げれないように両腕を壁に押し付けられて股下に膝が入る。
「答えろ。リア」
『......』
「あれ?天使チャンじゃね?」
気まずさで答えられないでいると聞きたくなかった声がリツカの背後から聞こえてきた。
後ろ振り返れば、にっこりと笑っている半間の姿が目に入る。
しかし、その目は笑っておらず冷たい眼差しをリツカに注いでいた。
『っ.....はん.....ま』
「あれ?一虎と一緒じゃねぇの?マイキーと浮気?それとももしかして芭流覇羅を裏切ったのか?」
『違っ......違う!マイキーとはさっきあったばかりで.....(マズイ!怪しまれた.....!)』
冷たい目にリツカは恐怖を覚えマイキーを突き放すと必死に否定する。