第14章 嵐の前の静けさ
スースーと規則正しい呼吸音が聞こえ、リツカが寝たことを確かめた場地は目にかかったリツカの髪の毛を耳にかけ、顔を見る。
その首元には痛ましい赤い鬱血痕と歯型が無数に残っていた。
恐らくこれは全部一虎に付けられた痕なのだろう。
その様子をずっと隣で見てきた場地は容易にそれが理解出来た。
場地はそのひとつを撫でるとつらそうに顔を歪める。
「巻き込んじまって悪ぃな。リアァ」
『......』
「なんでオマエ、あんな事した俺らを見捨てねぇんだよ。見捨てようと思えばいくらでも見捨てれただろ....」
『......マイキー.....』
零された涙を場地はすくい上げる。
堕ちるのは俺たちだけでいい。
本来ならオマエは鳥籠の中で大切に育てられるはずの人間だ。
苦しむのは俺たちだけでいい。
コイツはコイツだけはどうか俺たちとは違う幸せな道を歩んで欲しい。
リツカ
オマエは俺の宝なんだ。
俺たちより力も弱くて小さいのにどこからか希望を運んできてくれる泣き虫な天使。
だから俺はコイツが心から今が幸せだと思えるように、俺たちの為に戦ってくれるオマエを守りたい。
例えそれがオマエが望んだことじゃ無くても.....
俺はオマエが幸せになる為ならば何だってしてやる!
そうあの日俺は誓ったんだ!!
傷つけてしまったオマエを守り続けるって!
それが俺ができる唯一の償いだって思ってるから
「この先俺たちにどんな地獄が待っていても、せめてオマエだけは光の道を歩いてくれ。」
届かぬ願いを呟いた場地はまるで願いを込めるようにリツカの手を握るとキスを落とした。