第14章 嵐の前の静けさ
卍 卍 卍
【リッちゃん。稀咲のことについて掴んだんだ!詳しい話をしたいから、未来で待ち合わせしよう。】
だらけるようにベッドへと横たわっていたリツカは送られてきたメールを一瞥し、すぐに携帯を投げ捨てると、机に置いてあるチェスの基盤へと目を向けた。
リツカが芭流覇羅に入り分かったことは芭流覇羅のトップが本当に存在しないということだった。
外からトップが分からなくても、内部に入れば多少話は聞けるはずだと踏んで潜入したものの、考えが甘かったのか、その影すらも見えず、No.2の半間やNo.3の一虎でさえも知らないのだと言う。
首のない天使。まさにその異名の通りトップの顔は誰も知らない。
空いた玉座
それは稀咲のモノ
では何故?稀咲は参番隊の隊長になった?
確かに東卍vs芭流覇羅の抗争はある。
だが、東京卍會150人vs芭流覇羅300人確実に芭流覇羅の方が圧倒的有利な状況だ。
仮に負けるリスクがあったとしても稀咲がトップで東卍に勝てば玉座は自ずと手に渡る。
むしろそっちの方が手っ取り早い。
しかし、それをしないのはなぜだ?
『まるで誰かのために開けられたような玉座.....そして誰も知らないトップ......稀咲は何がしたい?』
カツンと部屋の中に次々とチェスの駒が動く音が部屋に反響する。
愛美愛主を使ってパーちんを追い詰め、ぺーやんを唆した挙句、8・3抗争を引き起こし、ドラケンを始末しようとした。
そして長内を捨て、半間を懐に取り入れると、パーちんを無罪にするという餌でマイキーに取り入った。
なぜこんな回りくどいことをする?
そして芭流覇羅を作った理由はなんだ?
『.....もう一度ドラケンに話を聞きに行ってみるか。』
─────カツン
そう呟いたリツカはタケミチの後を追うようにして現代へと戻る。
残された基盤の上にはチェックメイトされた黒き女王が夕日に照らされ光り輝いていた。