第14章 嵐の前の静けさ
「稀咲にとって俺はただの踏み台だった。それがわかったのは8・3抗争だ。」
「8・3抗争ってドラケン君が刺されたあの?」
「そもそもあの抗争自体稀咲が仕組んだもんだ。稀咲はパーちんを追い詰めて東卍との喧嘩の理由を作った。全部俺のせいにしてな。」
「そんな....」
「そして俺が刺された後、稀咲は俺のやり方が気に入らねぇって理由つけてマイキーに近づいて、パーちんを無罪にできるって餌でマイキーに取り入った。」
「稀咲はなんでそんなメンドクセェーことをしたんだ?」
「8・3抗争での稀咲の目的は抗争に乗じてドラケンを殺し、空いた東卍のNo.2の座に座ることだったからだ。」
「ふぅん.....なるほどな〜。副総長が死ななかったからNo.2の座は空かなかったけど、代わりにパーちん君が捕まって参番隊隊長の座が空いた。だからそこを狙ったワケか。」
「ずる賢いというか....計算し尽くしてるというか....末恐ろしいですね。俺でも流石にそこまで思いつきませんよ。」
「あ、やっぱ兄貴でも無理?」
「ああ。無理だ。恐らく隊長でも......」
「なら尚更俺達には無理だなー」
思わずゴクと喉がなる。
緊張した空気が辺りに立ちこめ、その場の全員に冷や汗が流れた。
「俺は稀咲に捨てられた。だが、それを拾ってくれたのはオマエらんとこの隊長だ。」
「隊長が?」
「ああ。だから俺はアイツに紹介されたこの工務店で更生してる。俺がこうして生きてるのもアイツのおかげだ。」
「あの....長内君、稀咲にいいように使われて何でやっちまわないんすか?」
「無理だ。アイツはもう次の刀を手に入れてる。」
そういうと長内はギリィッと手を握りしめ、絞り出すような声で言った。