第12章 運命の天秤
『あ、ごめんなさい。』
「あ、やっと見つけた。俺の天使サマ」
『え......』
聞き覚えのある声にリツカの動きが止まる。
ぶつかった青年に視線を向けると目の前にいたのは忘れもしない見覚えのある鈴のピアスに、首の虎のタトゥーがある少年だった。
『一....虎....?』
「うん。」
『一虎!!』
突然現れた一虎と呼ばれた青年の顔を見てリツカは大きく目を見開くと勢いよく青年を抱きしめた。
『一虎!おかえり!元気してた!?』
「声デケェって。」
一虎と呼ばれた青年はふはっと笑うとリツカを抱き寄せる。
「久しぶりだな。リッカ。オマエは元気そうだな。」
『〜〜っ!』
「泣くなって。あれ?前より髪の毛長くなった?」
『え?あ、うん!一虎が長い方が似合うって言ったから.....』
「俺のため伸ばしてくれてるんだ。」
『まあね。』
チョイと人差し指と親指で髪の毛を持つと『似合う?』と笑ってみせる。
「俺のために伸ばしてくれたんならなんでも似合うよ。前より美人になったな。リッカ」
『もう。何言ってるの』
「可愛い。好きだよ。俺の天使様」
顔を赤くするリツカを一虎は愛おしそうに見つめた。
「手紙、ありがとうな。俺にとってオマエは心の支えだよ。」
『じゃあなんで出所教えてくれなかったの。言ってくれたら迎えに行ったのに!』
「ごめん。ごめん。その日は用事があったんだ。」
『ふぅん。じゃあ今度出所祝いさせて。圭介も誘って走りに行こ!』
「いいなそれ。また後ろに乗せてやるよ。」
『ところでなんで一虎がここにいるの.....』
「なんでって"迎えに来た"んだよ。リッカ」
首を横に傾けるとリンッと鈴から音が鳴る。
その言葉にリツカは少し暗い顔をすると『そっか。』と呟いた。
「ところでさ、2年の花垣武道って知ってる?そいつにも会いに来たんだ。」
『タケミチ?それならオレのダチだよ。』
「そいつの所まで連れてってくんない?」
『うん。』
リツカは一虎の手を握るとタケミチ達がいる教室まで一虎を案内する。