第12章 運命の天秤
「アイツ見た事あるぞ!」
「愛美愛主のやつじゃね?」
「愛美愛主の稀咲!」
「なんで愛美愛主がここにいんだよ!?」
「引っ込めや!愛美愛主!」
愛美愛主の稀咲だとわかった瞬間
主に参番隊の方から強烈なブーイングが上がる。
【引ーっ込め!!】
【引ーっ込め!!】
納得なんていくわけが無い。
不良の道に外れたことをし、パーちんを貶め、ぺーやんを唆したチームが新 参番隊隊長?そんなの誰も受け入れることなんてできなかった。
「黙れ!!!マイキーの決めたことだ。文句があるやつは前に出ろ!!」
【......】
ドラケンの凄みに誰もが口を噤んだ。
「ウチはこれから芭流覇羅とぶつかる。新興勢力 芭流覇羅は愛美愛主なんて目じゃねぇほどのデケェチームだ。勝つために東卍も勢力を拡大する!」
『(嫌だ.....嫌だ.....嫌だ....)』
確かに勝つためには勢力を拡大することは必要だ。
でも稀咲が居ることでこの先の未来.....12年後の未来の東卍は目を当てられないほど巨悪化してしまう。
12年後の未来を知っているリツカにとってその事実は絶望でしかなく、心の中にドロドロとした黒い何かが溜まっていくのがわかった。
「ここにいる稀咲鉄太は愛美愛主で俺ら世代をまとめてた男だ!芭流覇羅とモメるために稀咲は必要だ!!参番隊隊長は稀咲鉄太。覚えておけ!」
『(違う......違うよ。マイキー。参番隊の隊長はどんな理由があろうとパーだよ!)』
「参番隊隊長任命式を終わる!」
マイキーの締めの言葉ともに背を向けて歩き始める。
稀咲はスっと立ち上がるとマイキーに向かってお辞儀をした。
「総長!ありがとうございます!!」
「おう」
『何が....何がありがとうございますだよっ!』
ギリィと爪が食い込むのも厭わずリツカは拳をにぎりしめる。
「何を考えてんだか。ウチの大将は。」
そして挨拶が済んだ稀咲が振り返ったときだった。
─────ゴッ!!
辺りに鈍い音が響き渡った。
その音でハッ!としたリツカが視線を向けるとさっきまで隣にいたはずのタケミチが階段を駆け上がり、稀咲を殴っていたのだ。