第11章 呪われし約束を胸に
「うぅぅ.....」
「日向先生ぇぇ....」
「杏花ちゃん....グズッ....」
2人の葬式には親族、親戚そして友人がこぞって集まってくれた。
元々人望が厚かった2人のことだ。当たり前のこととも思えた。
しかし、本来なら座っていなければならないはずの杏花の実父と継母の席だけは空席で、ポツンとリツカだけが座っていた。
『.....』
わかっていたあの様子じゃああの人たちが来ることは無いと....
それにしても娘じゃない....あれはどういう意味なのだろう。
12年前あれほど溺愛していた娘になんであんなことを言ったのだろう....
ぐるぐると回る思考の中リツカは吐き気を覚える。
『娘の葬式にも来ないなんて....とんだ薄情者たちね。』
空席の席を睨みつけながらリツカはボソリと呟いた。
通夜が一通り行われ、次々と人々が出入りしていく。
その中にはタケミチの姿もあり、ナオトは悪夢のような現実に涙を流す。
「なんで何でだよっ。上手くいったと思ったはずなのにっ.....姉さんっ、杏花ぁ....」
「ナオト....」
『....』
絞り出された声と流される涙を前に涙が枯れてしまったリツカだけはただ虚空な瞳で祈りを捧げるタケミチたちを見ていた。
「本日はお忙しい中、故 橘日向並びに杏花の葬儀にご参列いただき誠にありがとうございました。2人も喜んでいることと思います。皆様お帰りの際はどうかお気をつけてお帰りください。」
その言葉ともに皆が後ろ髪を引かれる様にして重い足取りで家路へと着く。
しかし、リツカだけは未だ人の焼けた焦げ臭い匂いが立ち込める火葬場の中庭で昇る黒煙を眺めていた。