第10章 つかの間の幸せと絶望は死神とともに
「っ!お姉ちゃん!!」
────ドンッ!!
杏花は最後の力を振り絞ると、リツカの腕を無理矢理引き剥がし、車の外へと突き飛ばした。
『杏花ぁ!!』
「お姉ちゃん....そんな悲しい顔しないで。例え死んでも....私はずっとお姉ちゃんの傍にいるよ....」
自身の胸に手を当てると杏花はにっこりと微笑んだ。
「泣かないで、お姉ちゃん。また─────」
──────ドカァァァァンッ!!!
耳をつんざく轟音と共にリツカの身体は爆風に押し流され、車から引き離される。
ドサッ!!
倒れたリツカは車を見つめると自分がさっきまで乗っていた....そして杏花が乗っている車が爆発したのだと理解した。
『杏花.....いやだよ....何で何で何で.....』
夜の帳が降りた空を茜色に染め上げるほどの炎を前にリツカは打ちひしがれると、その青紫の瞳から雫をひとつまたひとつと流す。
【お姉ちゃん】
一つ一つ流れる涙と共に杏花との記憶がひとつまたひとつと呼び起こされていく。