第10章 つかの間の幸せと絶望は死神とともに
『(アッ君だ!アッ君と同じこと言ってる!)』
「隊長も.....兄貴も居なくなって.....俺....もうダメだったッス....総長、たちの暴走を、止められ、なかった....」
『何で!?海寿が杏花を!?何で警察官のはずでしょ!東卍は関係ないじゃん!!』
「.....怖いんッスよ....ただ稀咲が.....兄貴を殺そうとした稀咲が.....」
『何で.....稀咲が....』
次々と叩きつけられる残酷な現実にリツカの声が震える。
「......お願いします....どうか...どうかみんなを助けてください....泣き虫の天使様....」
最後の力を振り絞って、海寿はリツカに向かって血まみれの手を伸ばす。
『海寿っ!!』
リツカは急いでその手を握ろうと手を伸ばした瞬間
バチバチっ!!と切れた導線から火花が散ると共に
────ドオォォォォンッ!!!
轟音を立てて車が爆発した。
リツカの身体は爆風に押され、その手を握ることなく地面へと倒れた。
『あ....あぁ......』
灼熱の炎に包まれた大型車を前に唖然とするしかなく、受け入れ難い現実に絶望するしかない。
『せめて杏花だけでもっ!!』
リツカは灼熱の炎が杏花が乗る車に移る前に助け出すため走り出した。
『ハァ、ハァ......杏花!杏花!』
歪んでしまったドア越しから稀咲の姿を確認すると、窓を叩きながら2人の名前を叫ぶ。
「?お姉、ちゃん.....」
杏花はすぐに目を覚まし、目線だけをリツカに向ける。
『(よかった生きてる!!)今助けるから!!』
リツカは火傷することも厭わず、ドアノブを握るととてもじゃないが歪んでしまって開けにくいドアを無理やりこじ開ける。
『杏花!!』
やっと開いたドアに身体を滑り込ませる。