第10章 つかの間の幸せと絶望は死神とともに
卍 卍 卍
『嘘だよ....そんなわけない....はぁはぁ....成功したはずなんだ....だってアッ君だって生きてたっ....成功したはずなんだっ!』
遠目から白塗りの杏花が乗った車を見つけ、駆け寄ろうとした時だった。
リツカの背後から風を切る音が聞こえ1台の大型車が通り過ぎていく。
『杏花!!』
すぐにこの車が杏花を狙っているのだと気づいてリツカが叫ぶ。
しかし車は止まることなく刻一刻に近づいていき.....
『あ....』
────ガシャンッ!!!!!
轟音を上げながら杏花たちが乗る車を巻き込み壁へと衝突した。
『いやあぁぁぁっ!杏花あぁぁぁぁっ!』
ぺしゃんこに潰れた車と、余りにも悲惨な現実にリツカは絶望の声を上げながら車へと走り寄る。
その時、弱々しくも聞き覚えのある声がリツカの耳に入った。
「ッ....たい....ちょう?」
『え?』
その声には聞き覚えがあった。
「何で....何でッスか....何で車に乗ってねぇんスか.....」
この独特な喋り方、男性の割には少し高めの声。
間違えるわけが無い東京卍會にいた時ずっと私の背中を守ってくれていた双璧の1人....
『海寿....!嘘だ....何で、何でここに....!?』
「....」
頭から大量の血が流れる中、海寿はリツカから視線を逸らし、自身を足ともに視線を向ける。
「いつから....こう、なっちまったんスか...ね。」
『え....』
「俺は今や....稀咲の兵隊....ッス....東卍の皆も稀咲の言いなり.....」
『!?(この言葉、前にも.....)』
【いつからこうなっちまったんだろう。俺は今や稀咲の兵隊だ。】
声を震わせながらそう告げるアッ君の姿が海寿に重なった。