第10章 つかの間の幸せと絶望は死神とともに
1人残されたリツカは満点の星空と、夜景を反射する川を眺めながらポケットに入っていた煙草に火をつける。
『12年前の私....確かに杏花に拒絶されたよね?』
でもこの世界では私が杏花を拒絶したことになってる?
それにあの言葉の意味が分からない
あの言葉の意味はどういうことだ?
─────「本当のお姉ちゃんみたいな人だった。」
私の記憶が正しければ私は杏花の姉で間違いないはずだ。
あの人にそう言われた。
私たちは腹違いの姉妹だと。
杏花は父と愛人との間の子だ。
だから実質私たちは血縁状でも戸籍上でも姉妹のはずだ。
なのにあの言葉.....どういうことなんだろう?
何もかもが変わっている。
私が元いた世界とは何もかもが違った。
『なんで私が杏花を拒絶したことになってるのか分からない.....でも.....死ぬはずだった未来で杏花は生きてる.....確かに生きてる。』
リツカは紫煙をあげる煙草を自身の隣に置くと、自身の指を絡み合わせ、まるで祈りを捧げるように拳を額に当てた。
『もう二度と会えないと思ってた....二度とあの笑顔を見れないと思ってた....でも違った。本当に成功させたんだ。杏花が生きている未来を掴み取る事が出来たんだ!』
ポロポロとタンザナイトの瞳から枯れたはずの涙の雫がこぼれ落ちる。
『夢じゃないんだっ!!』
どれだけあの現実が夢であればと願っただろうか
どれだけの運命を呪い、神を呪っただろうか.....
分からないほどあの日からがらんどうの人生を歩んできた。
でも今は違う。
今度こそ意味のある人生を歩んでいける。
やっとやっと手に入れたのだ。
幸せと呼べる世界を....
もう二度と失いたくない。
『もう二度とあんな思いは────』
「あれ?なんでここに居んの?天使チャン。」
したくない。そう呟いた瞬間
冷たい死神の気配と共に黒い影がリツカを包んだ。