第10章 つかの間の幸せと絶望は死神とともに
『へぇ.....杏花を突放すなんて酷い人だね。』
「今でもたまに思うの。なんで私突き放されたんだろうって....なんで隣にいてくれなかったのって.....」
『.....』
「そんなに私は苦しめてたのかな.....やっぱり私は邪魔だった?」
『!?(え....)』
杏花はシトリンのように美しい瞳に涙を溜めながら振り返った。
「ねぇ。お姉ちゃん。なんで私を突き放したの?分かんないよっ.....教えてよ。」
『....!?』
涙......?
目の前の杏花にリツカはただ疑問が浮かんでは消えていく。
『お姉ちゃんみたいな人って.....
ネックレスをくれた人って.....
この世界で1番尊敬出来る人って.....』
全部全部.....
蒼葉六花(ワタシ)だったんだ!
その事実を前をリツカは一瞬たじろぐ。
すると杏花は悲しそうな表情を浮かべながら、リツカに問いかける。
「12年間.....ずっとあの人のことばかり考えてたの?」
『あの人....?』
「あの人はお姉ちゃんを捨てたのに。何で.....何でお姉ちゃんはそうやってあの人の為に無茶するの?何で自分を大切にしてくれないの?
何で自分を捨てたあの人を──────」
『何を言っているの.....杏花?』
「.....」
「ごめん....話しすぎた。忘れて。」
杏花はそう言うとふいっとリツカから視線を背けた。
「私....ちょっとトイレ行ってくるね。お姉ちゃんは車に戻っててもいいよ。」
それだけ残し、杏花はリツカを置き去りにして公衆トイレへと向かって行ってしまった。