第10章 つかの間の幸せと絶望は死神とともに
「ここの料理久しぶりだなぁ。すごく美味しい!」
『そうなんだ。ナオトと一緒に来たの?』
そう問いかけると杏花は少し暗い顔をして俯いた。
その瞬間
チャリっ。という音と共に杏花の首からしずく型のアメジストが着いたネックレスが垣間見えた。
『!(あのネックレス。私が上げたネックレスと同じ....)』
「この世界で1番尊敬出来る人と来たんだ。」
『へ、へぇー』
杏花はそう言うとまた運ばれてきた料理を食べ、店を出ると2人ですっかり暗くなってしまって人が居なくなった遊歩道を歩いていく。
そこでお互いに色んなことを話した。
12年前の思い出のこと
これから産まれてくるであろう新しい命のこと
私が知らない12年間の杏花の思い出
本当にたくさんのことを話した。
気づけば登りかけていた月が闇夜の夜景を照らすように真上へと登っているほど....
「お姉ちゃん。」
『ん?』
「実はここも思い出の場所なんだ。」
煌びやかな夜景を反射させる川を目の前に杏花はどこか懐かしそうに両手を広げながら背を向けリツカの前を歩く。
「お姉ちゃんが居なくなる少し前だったかな.....イブの夜、その日は特別にバイクに乗せてくれてここに来たんだ。」
『そうなんだ。なら大切な場所だね!』
「....」
『?』
「あの時はすごく楽しかったなぁ。色んな話をしてさ.....でもその後....私突き放されちゃったんだ。」
『え!?』
「このネックレスをくれた人に....」
杏花は悲しそうな声を漏らしながら、首から下げられたアメジストをつまみ上げる。
「その人のことずっと大好きだったんだ。一人ぼっちだった私を受け止めてくれた。本当のお姉ちゃんみたいな人だった。」
『.....』
何浮かれてるんだ私。
あのネックレスが私が上げた物なんて証拠なんてない。
それに私は所詮12年前に妹に拒絶された姉.....
そんな奴が尊敬できる人な訳ながない。
私はあの子を苦しめる存在でしかないんだから....